多元を生きる

 唐突だが、東日本大震災からの復興を考えるとき、掲題の「多元を生きる」がひとつのキーワードになるのではないか。フォーディズム的社会経済は20世紀にさっさと返上して、多元的経済社会を起動させなければならない。
 そんなことをぼんやりと考えているとき、この本『多元を生きる 創立25周年記念誌』(中京大学文化科学研究所)が送られてきた。私立大学付属の研究所、それも“文化科学”の研究所である。序文やあとがきに研究所運営の苦労が吐露されている。
 昨今、流行のように広がっている、経済利益が見込まれる研究を産学連携で進めるのでもなく、あるいは象牙の塔で細分化された学問に自閉するのでもない。
 大学にとっては困難な時代ではあるが、むしろ文化とは何か、人間的とはどういうことかを、社会のなかで生きるという尺度から真摯に問い考えられている。
 改めて学問することの意味を考えさせられる一冊である。