ことばの復興

 4月28日朝日新聞の論壇時評が素晴らしい。それは、高橋源一郎さんが書かれたもので、「身の丈超えぬ発言に希望」というタイトルの小文だった。

 多くの論者は、3.11後の新しい事態を語る言葉を持ち合わせていないように見えるのに対して、論壇以外のふつうの人たちが身の丈を超えずに、しかし生き生きと自分の言葉で語り始めているという。

 たとえば、城南信用金庫の「脱原発宣言」。「安心できる地域社会」をつくるために、「理想があり哲学がある企業」として、「できることから、地道にやっていく」というまことに平易なことばだった。原発は直接的に政治にかかわる偉い人たちだけがコントロールすべき問題ではなく、むしろ主権者である私たち国民一人ひとりが真剣に考えなければならぬ問題なのだ。

 「壊滅した町並みだけではなく、人びとを繋ぐ「ことば」もまた「復興」されなければならないのである」と高橋さんは最後に記している。至言である。