【ミニ書評】『雲南省ハニ族の生活誌』ミネルヴァ書房、2013年

 本日から11月9日まで、「読書週間」がスタートしました。今回は、龍谷大学国際文化学部の須藤護先生から受贈した『雲南省ハニ族の生活誌』ミネルヴァ書房、2013年を紹介します。

 大学時代に須藤先生には大変お世話になったのですが、2002年9月に雲南省大理への旅の途中で、本書の基になるフィールドワークをされていた先生とお会いしたことは、いまもよく憶えています。わたしが、学問の世界に興味をもったのも、一つのテーマを追究されている熱い先生に触れたことが大きかったように思います。ということで、以下、ミニ書評です。

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 本書は、中国雲南省に暮らすハニ族の歴史と生活文化を、現地の史料や実測データ、聞き書き等に基づく抑制された筆致で描いた生活誌である。そしてその根底には、日本文化形成史への関心が、どこか含まれているように思う。それは、著者が師事された民俗学者宮本常一の晩年に挑んだ未完のテーマでもあった。
 アジア情勢が変わりゆく今、本書を読むと、「民俗学を研究することは、民族の履歴を知ること」という著者も引用する柳田国男の言葉が切実に感じられてくる。多文化共生への祈りとでもいうべき民俗学の最良の記憶を伝える好著である。